胃 腸 の 病 気


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食 道

食道癌
 消化管の癌の中ではリンパ腺転移を起こしやすく死亡率の高い癌です。50歳以上の男性に多く、特にお酒とたばこを飲む人に多いとされています。早期の食道癌は無症状ですが、食べ物がしみる感じ・つかえ感などは重要な症状です。最近は内視鏡により早期の癌が高率に発見されるようになり、最も早い0期の癌では外科手術をせず内視鏡切除のみで治療できるようになっています。食道癌の早期発見のためには、定期的な内視鏡検査が必要です。

食道炎
 逆流性食道炎といわれ、胃液が食道に逆流して食道の下部にただれや潰瘍を作るものが最もよく見られます。高齢者に多く、むねやけ・食道内異物感・食物通過時の軽い疼痛など主な症状です。胃潰瘍で使われる胃酸の分泌を抑える薬が良く利きます。

食道静脈瘤
 食道の静脈が腫れて瘤のようになる病気です。大部分は肝硬変など肝臓の病気のある人に見られます。瘤が破れると大量の出血をして死亡することがありますが、その前に瘤を内視鏡でつぶしたり手術で取り除くといった治療がされます。

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胃 癌
 胃癌は減ってきていると言われていますが、我が国では現在でも肺癌と並び、最も死亡率の高い癌です。しかし診断法は確立されており、バリウム検査・内視鏡検査を定期的に受けていれば早期発見が可能です。発見した癌は外科手術や内視鏡切除をしますが、早期癌では95%以上、進行癌でもより早期のものでは70〜80%が治ります。そうはいっても手遅れの癌もいまだに多く、特別な症状がなくても最低年1回は専門医の検査を受けて下さい。

胃潰瘍
 胃の粘膜が削れて種々の大きさ、深さの穴を作ってきます。ストレスや不規則な食生活などいろいろな原因で潰瘍ができますが、最近はヘリコバクターピロリーという細菌が関係している潰瘍が多いと言われています。心窩部痛、吐き気、胸やけなどが主な症状です。治療としてはピロリー菌を殺す薬や胃酸を抑える薬でほとんどが治り、最近では手術になることはほとんどありません。癌化するものは多くありませんが、癌との区別の難しいものがあり、薬を飲んでいるだけではなく専門医の定期的な検査が必要です。

胃ポリープ
 3mm位から2cm位まで種々の大きさ・形の隆起を作ってきます。症状は全くないのが普通です。大腸のポリープと違い、胃のポリープは薬を飲んだり、切除したりする必要のないものが大部分です。癌に変わる可能性は少ないですが、癌とまぎらわしいポリープもあり、定期的な検査は必要です。

胃 炎
 胃の粘膜がただれるびらん性胃炎、粘膜が萎縮する萎縮性胃炎などが最もよく見られる胃炎です。びらん性胃炎は胃潰瘍と同じ様な原因で胃の粘膜が傷つき、症状もほとんど同じです。胃潰瘍と同様の薬を飲んで治療する必要があります。お酒の飲み過ぎなども影響があります。
 萎縮性胃炎は胃の粘膜が
萎縮し、消化液の分泌が低下するような胃炎です。胃のもたれ、食欲不振などの症状のあるときは消化剤・蠕動亢進剤などを飲む必要があります。ただし萎縮性胃炎は年齢が進むにつれほとんどの人に起きてきますので、症状のない場合は放置してかまいません。

胃粘膜下腫瘍
 胃の中に1〜5cmほどの比較的大きな隆起を作ってきます。粘膜の表面にできるポリープや癌と違い、筋肉層など粘膜の下の深いところに腫瘍ができます。子宮筋腫などと同じ種類のものです。大部分は症状もなく良性の腫瘍のため、そのまま放置してもかまいませんが、まれに悪性のものがあり、定期的な検査で大きさや形の変化がないかを見て行く必要があります。あまり大きなものは初めから切除しますが、最近は内視鏡切除や腹腔鏡切除の方法が進歩し、開腹手術までしなくて済む例が多くなっています。

胃リンパ腫
 胃の悪性疾患では癌についで多い病気ですが、それでも胃癌の1/20以下の発生率で、まれな病気といえます。胃のリンパ装置が腫瘍化し、進行すると全身に転移し生命を奪います。潰瘍を作るもの、隆起が目立つものなどいろいろな型があり、細胞の診断も癌より難しく、確定診断には専門医の知識と経験が必要です。症状としては潰瘍を作るタイプでは胃痛、胸やけなどがありますが、無症状のものが少なくありません。治療の基本は早期に発見して外科的に胃を全て切除します。しかし、最近は前述のヘリコバクターピロリー菌と関連するものがあり、ピロリー菌を薬で殺すことで治るリンパ腫があることが分かってきています。

異型上皮巣
 胃の腺腫と言われ胃の表面に5mmから2cm位の低い隆起を作ってきます。胃の良性ポリープと癌の中間に位置する病変で、細胞を5段階に分けて良性がGroup T、Uで癌はGroup W、Xとされますが、Group Vという変化が出ます。自覚症状は全くありません。1cm以下の小さなものは治療せずに定期検査でよいですが、それを越えるものは癌化の可能性もあり内視鏡的に切除するのが最善です。

胃アニサキス症
 白身の魚に生息するアニサキスという1〜3cm位の糸状の寄生虫が、口から入り胃壁に突き刺さることにより、激痛が起きます。刺身・造りなどを食べて数時間後に下痢を伴わないような胃の激痛があったら、アニサキス症の可能性があります。アニサキスは熱には弱いため煮たり焼いたりしたものは心配ありませんし、虫体が口から入っても悪さをせずに通過・排出されることも多く、あまり神経質になる必要はありません。胃に刺さった虫は内視鏡で除去することで、劇的に症状は治まります。薬を飲んで虫を殺す方法もあります。

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十二指腸

十二指腸癌
 十二指腸の癌はあまり多くはありません。ほとんどがポリープ状の隆起を作ってきますので、良性のポリープとの区別が大事です。早期の小さいうちに発見すれば、内視鏡で切除することができます。他に、乳頭部癌といい膵臓・胆管と関係する癌が見られ、進行すると黄疸などの症状が出ますが、早期の発見は易しくはありません。

十二指腸潰瘍
 十二指腸で一番多い病気は潰瘍です。胃潰瘍と同じ様な原因で発症し、症状も心窩部痛・吐き気・もたれ感など類似します。胃と十二指腸の両方に同時に潰瘍ができることも少なくありません。胃潰瘍に比べると若い男性でより多く、空腹時に痛むなど痛みと食事の関係がより明らかです。ほとんどの例で胃酸過多が見られ、胃酸の分泌を抑える薬が有効です。癌とは全く関係がないため、胃潰瘍と違いX線・内視鏡などの頻回な検査は必要ありません。

十二指腸ポリープ
 胃のポリープや異型上皮層と同じ様な性質の隆起が十二指腸にもできますが、あまり多くはありません。症状はなく大部分は放置してかまわないものです。1cmを越える大きめの腺腫は、癌との区別も難しく内視鏡的に切除するのがよいでしょう。

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小 腸

小腸癌
 胃や大腸に比べると多くはありませんが、小腸にも癌があります。検査がなかなか難しいため、現在でもほとんどが進行癌でしか見つかっていません。しかし、丁寧なX線検査をすることでより早期の発見が可能です。腹痛、腹部膨満など症状のあるときは特に、胃・大腸の検査に加えて小腸の検査を受けるようにして下さい。

小腸炎
 小腸にはクローン病、腸結核、アミロイドーシスなど特殊な炎症性疾患がいろいろあります。特にクローン病は最近増加の傾向にあり、数10cmにもおよぶ細長い潰瘍が多発し、栄養障害を起こす難治性の病気です。若い人に多く、腹痛・発熱・下痢・体重減少などが主な症状です。治療の基本は綿密に計画した食事療法です。炎症を繰り返し腸が硬くなり細くなった場合は手術も必要になることがあります。クローン病を含め他の小腸炎も小腸X線検査で診断が可能です。

小腸粘膜下腫瘍
 胃で説明したと同じ様な粘膜の下から発生する腫瘍があります。筋腫・脂肪腫など大きめの隆起を作ります。かなり大きなものでは腹痛・腹部膨満などの症状が出ますが、普通はあまり症状はありません。小腸X線検査で発見し、悪性(小腸肉腫)の可能性も考えられる場合は手術により切除します。

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大 腸

大腸癌
 大腸癌の死亡率は年々増加し、10〜15年後には胃癌死亡を越えるとも言われています。ほとんどの癌が男性に多いのに比べ、男女の差がなく女性にも高率に発見されます。便に血が混じる、便通異常などは重要な症状ですが、進行しても無症状のものもたくさんあります。
 診断法はほぼ確立しており、内視鏡検査により5mm前後の早期の状態で発見できます。より早く見つければ、ほとんどが内視鏡切除のみで済み、手術の必要がありません。
 今や大腸癌では死んではいけないのです。早期の癌を確実に見つけるためには、便の検査では不十分です。恥ずかしがらず、めんどうがらずに一度は大腸の内視鏡検査を受けて下さい。熟練した専門医の検査は決してつらくて痛い検査ではありません。

大腸ポリープ
 小さいものでは2〜3mmから大きくなると2cmくらいまでいろいろな形の隆起を作ります。胃などに比べはるかに高頻度に見られ、40才以上の人では10人に1人はポリープを持っています。普通は無症状で、便の潜血検査で陽性になることがあります。胃のポリープと異なり癌との関係は非常に重要で、大腸ポリープのほとんどは前に説明した細胞の分類でGroup V、つまり癌と良性の境目に入るものです。そのため6〜7mmを越えるものは切除が必要で、それ以下のものでも厳重な経過観察が必要です。2cmくらいまでは内視鏡で切除できますので、早めに発見し治療して下さい。

大腸炎
 大腸にも潰瘍性大腸炎、虚血性大腸炎、感染性腸炎などいろいろな炎症があります。潰瘍性大腸炎は潰瘍を多発する比較的若い人に多い病気で、下痢・粘血便が主な症状です。内科的に薬を飲んで治療しますが、ときには外科手術も必要になる難治性の病気です。虚血性腸炎は高齢者に多くやはり潰瘍を作る病気で、突然の腹痛と下血が症状です。特に治療しないうちに治るものも多く、腸が細くなるタイプ以外はあまり心配のないものです。感染性腸炎というのは、腸チフス、食中毒の腸炎や最近ではO157腸炎が有名で、細菌の感染で起こるものです。頻回の下痢・腹痛・発熱などが症状で、抗生物質の投与で治療します。

大腸憩室
 大腸壁に5〜10mm位の円形のくぼみができるものです。憩室が多発すると炎症を起こしやすく腸が硬くなり、兎の糞のような便が出るとか、便秘と下痢が交代するといった症状が出ることがあります。症状があれば薬で便通を整える程度でよく、さほど心配な病気ではありません。しかし、まれに憩室が破れて腹膜炎を起こし、手術が必要になることもあります。また、硬くなった腸に内視鏡を入れると、ひどく痛かったり腸に傷を付けることがあり、無理をせず必要に応じてX線検査に切り替えるなどの方法が最善です。

虫垂炎
 一般に盲腸炎といわれていますが、実際は盲腸の先端にある虫垂突起という部分に炎症が起こるものです。種々の細菌の感染が原因で、右下腹部の激痛・嘔吐・発熱などが急に起きて、治まらずに進行して行くのが特徴です。軽いものは抗生物質の点滴で治りますが、多くは手術で虫垂を切除します。

過敏性腸症候群
 腹痛・軟便や逆に硬便・残便感・腹部膨満などの症状が長く続きます。検査では潰瘍性大腸炎など明らかな炎症の所見はなく、蠕動亢進など腸の働きの面での異常が認められます。几帳面とか心配性などの性格の人に多く、若い女性に多く見られます。自律神経のバランスも関係します。規則正しい生活をし、便通を整える薬・自律神経調整薬などで治療しますが、特に最近開発されたポリカルボフィルカルシウムという薬は特効薬に近い効果が認められ、便秘型・下痢型の両方に有効です。

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肝 臓

肝臓癌
 肝臓癌の死亡は最近増加の傾向にあり、大腸癌と並ぶくらいになっています。比較的初期の症状は上腹部の鈍痛・食欲不振・悪心・嘔吐などですが、無症状のうちに発見しなければ治癒は困難です。ただし発生する人はかなり限られていて、大部分が肝炎や肝硬変にかかっている人から出てきます。そのため血液検査で肝炎などのチェックをし、危険性のある人には年1〜2回の超音波検査をします。腫瘍が小さければ外科切除が可能ですし、体外から針を刺して薬剤を注入し、癌細胞を殺すといった方法も行われています。まだまだ治りづらい癌の一つですが、早期発見と治療でかなり良くなってきているといった実状です。ただし、最近は根本原因の肝炎に対する予防・治療が確立してきたため、10〜20年後には肝臓癌は激減すると言われています。

肝 炎
 急性肝炎と慢性肝炎やA型・B型・C型肝炎など種々の分類および種類の肝炎がありますが、ほとんどのものは肝炎ウィルスによって起きます。食べ物・飲み水や輸血・注射など血液を介して感染します。急性肝炎は全身倦怠感・食欲不振・悪心・嘔吐・発熱の症状で発症し、その後に黄疸が出現します。血液検査で肝臓の酵素やウィルスの感染状態を調べれば、診断は容易につきます。安静にし、高蛋白の食事療法、ビタミンの投与で2〜4ヶ月くらいで治癒するものが大部分です。しかし、慢性化し肝硬変・肝癌へと進むものがあり、正確な診断・治療が必要です。最近では感染対策が進み発生も減ってきていますし、治療面でもウィルスを直接殺す薬の投与など大きな進歩が見られています。

肝硬変
 ウィルス性肝炎、過度の飲酒、胆汁のうっ滞など種々の原因で肝臓の細胞が死んで線維に置き換わってしまい、肝臓の働きができなくなってしまうものです。食欲不振・悪心・嘔吐・黄疸・腹水などが主な症状です。しかし、肝臓の細胞は代償性が強くかなり進行しても症状がでないことがあり、症状があるようではかなり状態は良くないと言えます。安静、高栄養食事療法、ビタミンや肝庇護剤投与といったものが主な治療法ですが、30%くらいに肝臓癌が発生し、食道静脈瘤からの出血や肝臓機能不全で死にいたる例がかなり多いのが現状です。

脂肪肝
 肝細胞の中に過剰な脂肪が蓄積する状態で、肥満・アルコールの常飲・糖尿病など種々の原因で起こってきます。無症状のものが大部分で、ときに倦怠感・食欲不振・腹部膨満といった症状が出ます。診断は血液検査と超音波検査で容易につきます。治療の基本は原因を取り除くことで、アルコールによるものは初期なら禁酒により速やかに軽快します。

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胆 嚢

胆嚢癌
 あまり多くはありませんが、助かりにくい癌とされてきました。女性が男性の2〜3倍多いのが特徴です。胆石症と関係が深く、胆石症の3%に胆嚢癌が認められ、逆に胆嚢癌の60〜95%に胆石が合併すると言われています。右季肋部痛・体重減少・黄疸などが症状ですが、症状が出てから見つかるのでは手遅れです。最近は超音波検査によりかなり早期の癌も発見できるようになっています。胆石、胆嚢炎のある方は、年1回は超音波検査を受けるのがよいでしょう。 

胆 石
 肝臓で作られた胆汁が胆汁の成分変化や細菌の感染などにより過度に濃縮され固まったものです。無症状のものもたくさんありますが、胆嚢や胆道の狭い部分に石が詰まると、激痛・発熱・黄疸などの症状が出ます。このような疼痛発作が頻回に起きる場合は手術が必要です。最近では衝撃波で破壊するとか、薬で溶かすといった方法がありますが、全例がうまく行くというわけではありません。癌との関係が深く、正しい診断と治療が必要です。

胆嚢ポリープ
 胆嚢壁に隆起を作るもので非腫瘍性と腫瘍性のものがあります。非腫瘍性で最もよく見られるのはコレステロールポリープで、多量のコレステロールが粘膜内に溜まりポリープ状になったものです。1〜5mmくらいの茎を持つ隆起で多発しますが、特別な治療は必要ありません。一方、腫瘍の仲間では腺腫があり、茎のない平坦な隆起となります。10mmを越えるような大きなものでは一部に癌が存在する可能性があり手術が必要になります。いずれも症状はありませんので、定期検査で見つけることになります。 

胆嚢炎
 胆石のため胆汁の流出が障害され、そこに細菌が感染して炎症を起こします。食後の腹痛・悪心・嘔吐・発熱などが主な症状です。血液検査と超音波検査で診断は容易につきます。胆嚢が破れるといった重いものには手術が必要ですが、抗生物質の投与により1週間くらいで治癒します。炎症が慢性化し頻繁に繰り返すときは、症状の安定しているときに手術するのが最善とされています。

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膵 臓

膵臓癌
 大腸癌や肝臓癌ほどではありませんが、最近増えてきている癌の一つです。男性に多く、若年者にはあまりないとされています。診断法は確立しているとは言えず、超音波・超音波内視鏡・CT・MRI・血管造影検査などかなり進歩はしてきましたが、大部分は進行癌で発見されるのが現状です。症状は食欲不振・悪心・嘔吐・体重減少などですが、症状が出てから発見されたものはほとんど手遅れです。少しでも早いものを見つけるためには、定期的な超音波検査を受けるのがよいでしょう。

膵 炎
 急性膵炎は活性化された膵臓の酵素が自分の組織を消化することによって起きるもので、胆石による胆汁の膵臓内逆流や過度のアルコール摂取などが原因となります。腹痛・悪心・嘔吐・発熱から重症例では血圧低下・ショックなどの症状が見られます。血液検査と超音波・CT検査などで診断が可能です。安静・絶食・抗生物質の投与などで軽快します。膵炎が慢性化し膵組織の破壊が進むと疼痛はむしろ少なくなりますが、消化吸収不良や膵性の糖尿病が発現します。進行を防ぐためにはアルコールや脂肪の摂取を控える必要があります。
 

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